千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

二ホントビナナフシ

<編集履歴> 2020年9月23日公開、2023年6月20日見直し更新(第10回目、2023年写真追加)

 

 ニホントビナナフシは九州以北では主に単為生殖を行うと言われているが、2013年には東京都内で両性生殖をしている様子が観察されている。袖ケ浦市内では「レア種」だが、大量に発生している食樹を見つけることができれば観察は容易だ。問題はどの樹木で大量発生しているかが分からないということ。2020年の観察例では多量に発生している樹木から20mほど離れた同種の樹木ではついに一度も見つけることができなかった。2020~2022年の3年間の観察より、食樹から落ちた個体が近くの下草の上にいるところを発見する例がしばしばあるように思える。その食樹でも9月に入ると見つからなくなる。秋になり成熟度が増すと移動しやすくなり、より高い場所に移動している可能性がある。

 

【2020年8月22日および23日】

 我が人生二度目のナナフシモドキを見つけた!と喜んでいた(2020年6月26日)が、それから約2か月後の2020年8月22日には二ホントビナナフシを本当に偶然から見つけた。これまた我が人生で初のことであるっ!残念なことにこの時にはカメラを持っていなかった。そこで翌23日に再チャレンジとばかりに同じ場所にやってきてみたら、その周辺でなんと4匹ほどが次々と見つかるではないか!まったく、これまでの自分の目はどんだけ節穴だったのやら・・・。  

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写真1 翅の伸びた成虫。レアな昆虫なので、通常よりも大きい横680ピクセルでの写真を幾枚か掲載する。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年9月8日千葉県袖ケ浦市久保田

 

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写真2 翅の伸びていない幼虫。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=7.1。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年8月29日千葉県袖ケ浦市久保田

 

 さて二ホントビナナフシとこれまでに見つけていたナナフシモドキを比べると、様々な点が異なっている。この違いを元にして2020年7月15日および翌16日に撮影していた全長15㎜程度の幼虫の写真を確認すると・・・、あれ、コイツは二ホントビナナフシじゃね?ちなみに「我が人生初の二ホントビナナフシ発見日」は前日7月14日のこと。この時はカメラを持っていなかったため(そのような時に限って別稿で述べるトゲナナフシも見つけていた)、他のナナフシの幼虫である可能性が無いとはいえないけれど、状況からその可能性はほぼ排除できる。ちなみに15日(人生初の撮影日)と16日にはそれぞれ一匹を見つけているが、15日に撮影した個体は左前脚が無いので、明らかに別なヤツだ。コイツらは梅雨空の下、水路近くの落葉の上を歩いていたのだが、 この周辺にも親の生育地があったのだろうか。それから約6週間後の9月8日には、この近くの道路わきの雑草の上で二ホントビナナフシの幼虫を一匹見つけている。

 二ホントビナナフシを飼育されている方の情報をネットで探すと2009年10月6日に回収した卵が孵化したのが2010年6月10日だったというものがある。地域や年ごとの気温差もあろうが、6月中旬頃に孵化して幼虫が姿を現わすと考えてよいのだろう。ナナフシモドキの幼虫は4月初旬に姿を見せ、6月中旬頃には指の幅四本分(約75mm)まで成長するのと比べて、かなりのズレがある。

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写真3 おそらくは二ホントビナナフシの幼虫。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/125秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年7月16日千葉県袖ケ浦市久保田

 

 2020年8月29日には5匹の二ホントビナナフシを 一か所で見つけたが、このうちの3匹は翅の伸びた成虫、2匹はまだ翅の短い幼虫だった。いつごろ成熟するのか推定するためにも見つけた日付や状況の記録は大切だと思うので記しておく。

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写真4 二ホントビナナフシの成虫。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=13。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年8月29日千葉県袖ケ浦市久保田

 

 さて一つの食樹に数匹がいるところを見られたのだが、9月8日を最後に全く見ることができなくなってしまった。新たな葉っぱの齧りあともみつからず、みんなどこに行ってしまったのやら。ナナフシのお話(その1、ナナフシモドキ)で述べているが、コイツらの生活史は判らない事が多い。どこかに移動したのか、捕食者に食べられてしまったのか、昆虫採取者に捕られてしまったのか・・・。

<追記>2020年9月27日、この食樹にて一匹見つけました。さんざん探したつもりだけれど、やっぱりこの一匹だけでした・・・。

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写真5 この日は一画面に幼虫(左)と成虫(右)を同時に入れることもできた。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/200秒, f=11。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年8月29日千葉県袖ケ浦市久保田

 

【2021年07月20日

 2020年シーズンは2か所でしか本種を見つけていない。そのうちの一か所の樹木は2020年12月頃から翌2021年2月ごろまでの間に本種がたかっていた下枝を全て剪定されてしまった。地面に産み落とされた卵から孵ったばかりの幼虫は、恐らくは最低でも4mほどの高さにある葉まではたどり着けないのではないだろうか・・・。そう考えて、2021年シーズンの初めはこの樹木周辺の観察と新たな発生場所を探していたのだが、新たな個体を見つけることができずに梅雨明けとなった。7月20日になってようやく椎の森公園脇で一匹だけクズの葉の上にいる個体を見つけた。よっしゃぁぁぁっ!!

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写真6 2021年シーズンでは7月20日になって全長50㎜程度に育った個体をようやくみつけた。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2021年7月20日、千葉県袖ケ浦市椎の森公園脇にて

 

【2021年09月27日】

 昨年数多くのニホントビナナフシを見つけた樹木(数多くの個体のいたひこばえの茂みは冬の間に剪定されてしまっていた)から3mほど離れた桜の若木に一匹が止まっているのを発見!今年二例目の発見だ。この場所では今年初の発見であり、また2年続けて同じ場所でみつけたことから、この周辺で定着して繁殖している可能性が高いと思われた。来年も定期観察点にすることにしよう。ああ、イイものを見ることができた。手に取ってさらによく見ようと撮影後に触ったらポロリと落ちて、下草となっているササの葉にとまった。いい具合だったので、そこでも撮影を続行した。

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写真7 写真2,4,5とほぼ同じ場所で2021年シーズンに見つけた成虫。この辺りに定着しているものと考えている。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/200秒, f=9.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2021年9月27日、千葉県袖ケ浦市久保田

 

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写真8 写真7と同じ個体。写真7を撮影した後、手に取ろうとしたらポロリと落ちて下草のササの葉にとまった。一種の「やらせ写真」だな。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=10。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2021年9月27日、千葉県袖ケ浦市久保田

 

【2022年7月11日】

 上述の場所とは異なる場所の下草の上に止まっていた体長70mm程度(指3本チョイ程度)のニホントビナナフシの成虫。今年初の発見個体だ。「ここにもいるんだ」と新たな生息場所を発見できたことを嬉しく感じた。今年はあと何匹見つけることができるだろう?

写真9 上記とは異なる場所でみつけた日本トビナナフシの成虫。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年7月11日、千葉県袖ケ浦市蔵波

 

写真10 写真9と同じ個体を縦位置で撮影。EOS70D, EF70-20mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年7月11日、千葉県袖ケ浦市蔵波

 

写真11 写真10を撮影後にお尻をつついて少し移動させて撮影したもの。これも一種の「やらせ写真」だな。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年7月11日、千葉県袖ケ浦市蔵波

 

【2022年7月12-13日】

 7月11日にニホントビナナフシを見つけた場所で、他にもいるのではないかと12日の午後に周辺を探すこと約2時間。2匹を見つけることができた。いずれも下草の上にとまっていたので、近くの樹木から落ちてきた個体である可能性がたかい。そこで周辺の樹木を中心に探していたのだが、見つからない。

 唯一、4mほどの高さの枝にナナフシモドキがいるのを見つけた。やはり105mm程度の個体になると垂直方向にも移動するようになるために「見える範囲」では見つからなくなるに違いないなどと思うが、それについては「ナナフシモドキ(2022年対応版)」の記事の中で述べることにする。

 カメラを持ってウロウロしている姿を見て通りすがりの人が声をかけてくる「何かいるのですか?あぁ、ナナフシですか。この辺にたくさんいますよ!」。なに?”たくさん”いるだと・・・??改めて周辺を見わたすと、現在自分がナナフシを探している樹木の茂った高台の斜面に幅3mほどの道路があり、この道路の谷側にも数本の樹木が生えている。そのうちの一本は一昨年ニホントビナナフシを見つけた樹木と同種の木だ。まさか・・・?とその樹木の低い位置の葉を見るといたっ!いたいたっ!!いたたたたっ!10分ほどの間に10匹。新たなコロニーを見つけてしまった。11日に見つけた1匹と12日(先ほど)に見つけた2匹(1匹は11日と同じ個体かもしれない)は、この樹木から落下した個体が道路を渡ってきて、下草の上にたどりついたという可能性が考えられた。

 13日にはもう一度確認のために訪問し、この樹木で10匹を見つけた。昨日見つけた10匹を全て再びみつけたということだろうか?まぁ、とにかく、灯台下暗しというか、相変わらず自分の目は節穴だったというか・・・(汗)。見つけた個体のうち6匹は赤い翅が見える個体だった。念のために2020年、2021年に撮影したニホントビナナフシの写真を全て確認したが、このように「赤い翅を見せている個体」の写真は一枚も無かった。今後の観察対象にしようと心に決めたことは言うまでもない。

7月20日に三度目の訪問をし、7匹をみつけた。このうち紅色の翅をのぞかせている個体は3個体で残る4匹はノーマルであった。

8月5日、14日、17日に訪問し、かなりじっくりと観察したつもりであったが、一匹も見つけることはできなかった。その後も何度か通ったが、ついに新たな個体を見つけることなくシーズンは終わった。どこに行ってしまうのか?鳥に全て食べられてしまったのだろうか?

写真12 新たに見つけたコロニーにいた数匹のニホントビナナフシは写真のように赤い翅を見せていた。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年7月13日、千葉県袖ケ浦市蔵波

 

【2022年8月25日】

 過去に数多くのニホントビナナフシを見つけている場所(写真2,4,5,7,8と同じ)で2匹を見つけた。一匹は高さ4mほどの葉の上にいた。これが2022年シーズン中に見た最後のニホントビナナフシとなった。

写真13 4mほどの高さの葉の上にいたトビナナフシ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/125秒, f=7.1。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年8月25日、千葉県袖ケ浦市久保田

 

【2023年6月20日

 市内のC16と名付けた観察ポイント(緑地/畑作地)に隣接する民家の生垣にて雌の成虫(7cm程度)2匹と成虫直前の幼虫(5cm程度、成虫よりやや小さい程度)1匹を見つけた。これまでの発見例から食草(葉)としているならばもう数匹は居ても良さそうなものだが・・と、かなり丹念に探したのだけれど、見つけることはできなかった。

写真14 民家の生垣にいたトビナナフシ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2023年6月20日、千葉県袖ケ浦市蔵波

 

写真15 写真14を撮影したあとでつついたらポロリと落ちて、腹を上にして草に引っ掛かって止まった。腹側の様子を観察するチャンスだったので1枚撮影した。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2023年6月20日、千葉県袖ケ浦市蔵波

以上