千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

ケヤリムシ

<編集履歴> 2020年10月04日公開、2022年5月5日見直し更新(第3回目、写真追加)

 

 ケヤリムシSabellastarte japonica(学名については下段参照)はゴカイの仲間だが、潮だまりのやや深いところで直径2~8cm程度の比較的大きな鰓冠を出しているので見つけやすい生物だ。ただし大変に憶病で、うっかり近づくと鰓冠をスッと引っ込め10分程度は出てこない。内房の磯や防波堤で見られるが、他の生物よりやや深い場所に生息することが多く、手を伸ばした範囲で撮影するならば大潮の時でないと難しい。このため「そこそこに見かける」けれど、「(現行の私の撮影スタイルでは)なかなか写真を撮れない生物」の一つである。なお感覚的には内房よりも三浦半島先端部付近の方が多く見られるように思う。外房には私自身がほとんど足を運ばないこともあって生息の確認はしていない。

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写真1 ケヤリムシの鰓冠。Pentax Optio WG-1, ISO400, 1/20秒、f=3.8。手持ち撮影、トリミングあり。2012年6月24日、神奈川県油壷

 

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写真2 斜め横から見たケヤリムシの鰓冠。Pentax Optio WG-1, ISO400, 1/250秒、 f=4.6。手持ち撮影、トリミングあり。2020年6月6日、千葉県富津市上総湊駅周辺

 

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写真3 ケヤリムシの鰓冠。潮の流れに乗ってユラユラ揺れるので、潮が止まった瞬間が撮影チャンスだ。Pentax Optio WG-1, ISO400, 1/250秒、f=4.6。手持ち撮影、トリミングあり。2021年4月16日、千葉県富津市上総湊駅周辺

 

写真4 綺麗に丸く開いたケヤリムシの鰓冠を撮影してみたいと思うが、タイドプールで手を伸ばして撮影できる範囲にいる個体を相手にしていると、それもなかなか難しい。これは「理想の絵」に近い及第点のショット。Pentax Optio WG-1, ISO400, 1/400秒、f=4.6。手持ち撮影、トリミングあり。2022年5月3日、千葉県富津市浜金谷駅周辺

 

写真5 水底で鰓冠を広げるケヤリムシPentax Optio WG-1, ISO400, 1/320秒、f=4.6。手持ち撮影、トリミングあり。2022年5月5日、千葉県富津市上総湊駅周辺

 

写真6 危険を感じて鰓冠を閉じようとしているケヤリムシ。上の写真5の連続写真だ。Pentax Optio WG-1, ISO400, 1/400秒、f=4.6。手持ち撮影、トリミングあり。2022年5月5日、千葉県富津市上総湊駅周辺

 

ケヤリムシの学名】

 学名と標準和名は一対一対応が理想的なのだが、多くの生物では「この生物はコイツと同じじゃね?」「この生物とこの生物は外見は同じで、これまで同じ名前だったけれど、分子生物学的に全然違うじゃん!」と、いう議論(研究活動)が常に行われていて、研究者が納得するまでは一対多、多対一、多対多の組み合わせで学名と標準和名が存在する。

 ケヤリムシもご多分に漏れず対応する学名にはSabellastarte japonicaとS. indicaが存在しており、この分野では有名なデータベースサイト「World Register of Marine Species (WoRMs)」*1ではS. japonicaをBranchiomma cingulatumのシノニム(異名)としているが、その後ろには「チェックリストエラー?」なんて表示もくっついている。そしてそのB. cingulataは日本ではムラクモケヤリという標準和名になっている。またKnight-Jones and Mackie (2003)*2ではS. indicaはS. spectabilisのシノニムとされている。このややこしい関係、理解できるかな(苦笑。文書で書くより相関図を描いて確認してみよう)。最新情報を反映するほど詳しいことを調べているワケではないので、本記事では検索して最初に見つけたSabellastarte japonicaとしておく。

*1 http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=333129

*2 Knight-Jones, P. and Mackie, A.S.Y. 2003. A revision of Sabellastarte (Polychaete: Sabellidae). Journal of Natural History 37: 2269-2301.

以上