千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

磯焼け

内房でも磯焼けが進んでいる。

 ”磯焼け”の定義はウイキペディアや成書などを読んでもらうとして、本Blog内では褐藻や紅藻が極端に少なくなり、岩場が石灰藻に覆われている状態やムラサキウニが高密度で生息している状態を指すことにする。理由は水上から目で見た範囲の状況で「ああ、磯焼けしているな」と判断しているからだ。

 

安房勝山にて】

 さて2020年4月30日に安房勝山周辺の海岸を歩き回ってきた。この辺りは父親の勤めていた会社の保養施設があったことから1970年代ごろにはよく遊びに来ていた場所だ。約50年(半世紀!)が経った今でも当時釣りをした岩場などがまだ形を残している。

 が、生物相は一変していた。

 磯遊びをしていたあたりは灰白色~やや赤みを帯びた灰白色の石灰藻で覆われ、ムラサキウニが超高密度で生息していた。こいつら、いったい何を喰っているのだろう?少し離れたエリアでは水中に褐藻類が漂っているのが見えたので「完全に海の砂漠化」したワケでは無さそうだが、そうなるのも時間の問題だろうかねぇ。ムラサキウニが群生している岩場ではその他の生物(小魚や小エビ、イソギンチャク、アメフラシなど)はほとんど見られなかったが、300mほど離れた別の岩場では石灰藻とその他の海藻の覆う割合が50:50程度であり、アオウミウシをはじめ、多くの生物を観察することができた。(場所の特定を避けるため、やや曖昧に書いてます。あしからず。)

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写真1 ムラサキウニだらけ。(2020年4月30日、安房勝山駅周辺にて)

 

浜金谷駅周辺】

 コロナ騒動が始まり、外出自粛が広がった2020年前半シーズンに時々訪問したのが浜金谷駅周辺だ。その後は自宅近くでナナフシモドキを見つけ、その継続的な観察を優先させていたので海岸からは少々足が遠のいていたのだ。

2021年2月13日、8ヶ月で訪問して驚いた。

磯焼けが進んでいるっ!

昨年タコを見つけて追い回した岩場が完全に石灰藻で覆われていた。

マナマコを見つけた磯だまりも真っ白になっていた。

 漁業関係者にお話を伺うと、ここ数年で急速に磯焼けが進んでいるとのこと。浜金谷より南(保田方面)は酷く、北(竹岡方面)にはまだまともな磯が残っているとのことだった。(この時、その「北」の方から南下してきたので、「まともな磯」の残り具合も感覚的には理解した。) 

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写真2 灰白色の石灰藻だけが岩場を覆っていた。(2021年5月14日、浜金谷駅周辺)

 

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写真3 こんな写真をBlogに使うのは印象操作になるかなぁと思いながらも石灰藻で覆われた磯だまりを撮影する。(2021年4月28日、浜金谷駅周辺)

 

上総湊駅周辺】

 2020年春に初めて訪問し、観察ポイントとしたエリア。2021年は5月になって初めて足を運んだが、「あれ、こんなに石灰藻がはびこっていたっけ?」と感じる程度には磯焼けが進行していた。ただしムラサキウニは存在するものの、ほとんど姿を見せない程度であり、「ウニが食害するので磯焼けが進行する」という説には個人的には反対する。様々な要因で緑藻、褐藻、紅藻類が減退し、石灰藻が増え、その環境にも耐える強いウニが残るので、ウニの大発生やウニによる食害が目立つのではないだろうか。

 すなわちウニが目立つ頃には、すでに磯焼けの条件が出来上がり、いわば「最終段階」になっているのではないかと思う次第だ。(まだ勉強中なので「思うだけ」の程度です。念のため)

 

【今後の話】

 磯焼けの進行に対してボク自身が出来ることは実務上何もない。

 せいぜい干潮時の岩場の様子を、のちのち定点比較ができるように場所や撮影方向を細かくメモしながら撮影しておくくらいだろうかね。

 磯焼けが生ずる原因は複数の要因のバランスが崩れたこととされる。ウニの異常増殖、藻食性の魚種の増加、温暖化、海流の変化、水中の栄養塩分の減少などなど。

 現在は多くの論文などがネットで簡単に読めるようになっているので、当面はそれらを眺めて知識を増やして行こうかなどと考えている。

 ある要因が変化した場合でも見た目をなんとか保ってきた生物相が、その要因変化量がある点を超えた時に維持できなくなって一気に崩壊・死滅して消え去り、その環境に適応できる生物だけが残るというモデルがある。このモデルと国内下水道の普及による栄養塩類の排出量減少、河川整備による山奥から海洋に流出する栄養塩類の流出量減少との関係があるのかどうかという視点での研究に幾分興味があるので、当面はその辺を中心に調べてみようかと考えているところだ。

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写真4 ムラサキウニの個体数は多いがどれも中身は無いという(漁業関係者談)。三浦半島で廃棄キャベツを与えて身を太らせる話があったが、経済効率(産業的生産効率)を考えると実施は極めて困難との試算がある。個々の対処策ではなく、結局は「元の海に戻すにはどうしたらよいか」ということを考えるのが一番の近道であるような気がしている。まぁ・・・、先ずはもう少し勉強してみようか。(2021年4月28日、浜金谷駅周辺)

 

以上

2021年05月17日 公開

2021年05月28日 見直し更新(第1回目、上総湊駅周辺の様子を追記)