<編集履歴> 2020年5月10日公開、2021年7月12日見直し更新(第5回目、現地観察記録追記(文書のみ))
2020年春に見つけてから約一年間、グミ(グミモドキを含む)かイシコか識別できていない生物だが、ネット写真をイロイロと眺めた結果、イシコEupentacta chronhjelmiとしておく。学名にはCucumaria chronhjelmiというものもあるようだが、どちらが最新の名称であるかは確認していない。(シノニム(一つの種に二つ以上の異なる学名がつけられてしまったもの)では無いようだ。)
【初めての出会い:2020年5月9日】
2020年5月9日に内房線上総湊駅近くのフィールドに来た時には、2m四方程度の範囲の岩の割れ目にびっしりとイシコが挟まっていた。干潮時間に干上がって幾分弱っていたような感じで、大きさは縮んで3cm、伸びて5cm程度の大きさだった。
写真1 岩の割れ目にびっしりと挟まっていた(半分は転がっていた状態)。Pentax Optio WG-1、ISO400、1/1500秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2020年5月9日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
【二度目の出会い:2020年6月6日】
2020年6月6日にはコイツの生息範囲を確認するために同じフィールドに足を運んだ。前回見つけた時から一か月が経過したので移動している可能性もあるよな、と行ってみたら、予想通りに見事にいない。それでも数個体をみつけることができた(写真2)。
写真2 岩の割れ目でみつけたイシコ。Pentax Optio WG-1、ISO400、1/1500秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2020年6月6日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
居なくなったものは仕方ないね。と落ちていた貝殻を拾い上げると小石がくっついてくる「???」。小石を取り除くと特徴的な管足が見えた。「見つけた~っ!!」(写真3)。周辺の小石や貝殻をひっくり返すと次々に見つかります。
こうしてこのエリアにおける大体の生息範囲を確認することができました。(生育場所保護のため詳細は省略)
写真3 小石や貝殻を身にまとったイシコ。Pentax Optio WG-1、ISO400、1/640秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2020年6月6日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
写真4 エラの様子。ネット上にある写真ではもっと長く伸びているのだが、そのような状態は確認できなかった。Pentax Optio WG-1、ISO400、1/640秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2020年6月6日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
【3回目の観察:一年後の2021年4月27日】
2020年は6月6日以降は近所でナナフシモドキを見つけ、その観察に力を入れていたため、上総湊のフィールドに足を運ぶことは無かった(正確には7月に予定していたが悪天候のために断念している)。だが、2021年はもう少し力を入れて観察しよう、特に「岩の割目に沢山いる状態」をもう一度確認しようと考え、4月27日に現地を再訪した。
結果を言えば「岩の割目に沢山いる状態」は観察できず、砂地の上に「裸の状態」でいたのは2個体だけ。大きな貝殻の裏や転岩の裏に小石や貝殻の破片をまとっていた個体はいくつか見つけたが、全体的に小さなものが多かった(2~4cm程度)。
写真5 砂地に転がっていた4cm程度の個体。エラを出しているが、やはりネット上にある写真に比べると伸びの程度が小さい。別種なのだろうか?Pentax Optio WG-1、ISO400、1/1500秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2021年4月27日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
写真6 海中で貝殻をひっくり返すと小石や貝殻の破片をまとったイシコが確認できた。Pentax Optio WG-1、ISO400、1/1000秒、f=4.6、手持ち撮影。トリミングあり。2021年4月27日、千葉県富津市上総湊駅周辺。
【4回目の観察:さらに一か月後の2021年5月26日】
一か月後の大潮の際(2021年5月26日)に同じ観察場所を訪問した。
今回も岩の割れ目にいる個体は見つからなかった。さらには貝殻の下で砂を身にまとっている個体の発見程度もやや少な目であり(同じエリアのハズなのだけれどなぁ)、先月に比べると全体的に小さい個体が多かったように思う。これは来月も定点観察を行わなければっ?!
【5回目の観察:2021年7月10日】
同じエリアを結構丹念に探したつもりだけれど、一匹もみつけることが出来なかった。海の深いところに移動したのか?それとも親の世代は死滅して見つからなくなったのか??
【2022年5月4日および5日】
同じエリアを大潮の日に訪問したが、風が強くて水面下を観察することができなかった。それでも風が息をついたときに周囲を見回し、目についた大きな貝殻を拾い上げてひっくり返してみたのだが、二日間で2匹しか確認できなかった。2020年5月9日に訪問した時のように「岩の隙間にびっしり」と生息している様子は今後見ることはできるのだろうか?
【参考】
本種の生態はあまり判っていないようです。伊豆半島では3月ごろに近縁種のグミが海底に文字通り「林立」していたものが、4月中旬には一斉に姿を消して、上の写真3のように砂粒まみれになることが観察されています。この「林立」した時期に海が荒れると、海岸で単体(写真2の状態)が数多く見つかるようです。
2020年の内房では姿を消す時期が一か月ほどズレているようですが、水温の関係でしょうかね?生殖時期は秋ごろとされているようです。
以上