千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

ナナフシモドキ(その1,2020年版)

<編集履歴> 2020年03月21日公開、2021年06月04日見直し更新(第3回目、写真リンク切れ修正)

 

 小さいころから虫好きであった私だが、ナナフシは動物園や水族館の特別展でしか見たことがなかった。いや、正確には確か中学生のころに家族で長野県に旅行した際に草を刈られた道端で腹部を失ってもがく個体を見たことがあるのだが、状況からノーカウントとしておこう。 なお通常”ナナフシ”と呼んでいるこの昆虫の標準和名は”ナナフシモドキ”という。もともとは節くれだった木の枝のことを”ナナフシ”と呼び、これに似ているから”ナナフシモドキ”と呼んだのが語源だそうだ。

  袖ケ浦市周辺にはナナフシモドキのほかにもトゲナナフシ、二ホントビナナフシおよびタイワントビナナフシが生息していることを2020年に確認している。

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写真1 葉の上のナナフシモドキ褐色個体。(2020年6月27日、袖ケ浦市久保田)

 

 時は流れて2008年8月12日の夜、当時住んでいた会社の寮の駐車場周辺にてアブラゼミの羽化を撮るべくウロウロしていた時のこと。ケヤキの木の目の高さほどのところに枝のようなものがくっついて揺れているのを見つけた。おぉっ?!ナナフシだっ!!

これが人生初の「天然モノ(かつ完全体)」のナナフシモドキとの出会いであった。手にしたコンパクトデジカメで数枚撮影していると、ヤツはヒョコヒョコと樹の幹を登っていき、やがて見えなくなってしまった。 

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写真2 我が人生、初の撮影個体。(2008年8月12日、袖ケ浦市久保田)

 

袖ケ浦にはナナフシが生息しているっ!」

 この事実が確実となったものの、その後は再び見つけることができないまま12年が過ぎた2020年6月26日。久保田のゴルフクラブ近くの草むらを何気なく眺めると、雑草の葉の上にナナフシが止まっているではないかっ!よく見ると右前脚が変形している。自切したものを再生中なのだろうか?この時は近くの湧き水のあるところでサワガニの撮影をするためにカメラを持参していたので撮影にも成功した。

 この辺りにはまだまだ生息しているに違いない、と翌27日にジックリと探すと新たに4匹を見つけることができた。さらに7月3日はJR長浦駅近くの草むらでも5匹を発見した。袖ケ浦市の各地にナナフシモドキが生息していることが確実となったが、同時に袖ケ浦市に1994年に引越してきてから今まで何を見ていたのか、何を探していたのかと情けなくなった。私の目は大きな節穴だったようだ。

 そして8月22日にはゴルフクラブ近くの切通しにて全長10㎜、胴体幅0.2-0.3mm程度の幼虫を見つけた。この日は二ホントビナナフシも見つけており(詳細は別稿に記す)、カメラを持たずに散歩に出かけたことを大いに悔やんだものだ。

 ナナフシモドキについて2020年シーズンの状況をまとめてみると、「人生二度目の発見!」と大喜びした2020年6月26日以降、最後に発見した7月30日までの間に袖ケ浦市内で4か所、15匹ほどを確認することができたが、8月以降には「三日に一度」以上の頻度で散歩のついでに「定点観測」を行っていたにも関わらず、全く見つけることができなくなってしまった。

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写真2 右前脚が変形した緑色個体。(2020年6月27日、久保田にて)

 

<来年以降への課題>

どうして、これまで見つけることができなかったのか?どうして2020年は見つけることができたのか?その明確な解答は不明だが、仕事を辞めて心にゆとりができたことと、これによってジックリと観察する時間ができたことが大きいと考えている。なにせ観察する際の移動速度はせいぜい時速50~100m程度だ。気持ちを集中して虫の居所を探るが、気力の持続時間はせいぜい20分、一日に数セットというのがよいところだろう。

6月後半から7月にかけて「葉の上にいた」というのも一つのキーワードかもしれない。ナナフシの生活史における行動パターンは不明なことが多い。8月以降はこれまで見つけたことのある場所をいくら探しても見つけることができなくなった。秋には産卵して生涯を終えるというナナフシモドキは7月と8月でその生育場所を変えるのだろうか?「葉の上」にいたヤツらは成熟すると隠れるようになるのだろうか?見つけたナナフシは概ね地表から1mから2m程度のところで発見されている(私自身の目の高さ、と言った方が早いかもしれない)。もっと高いところか、あるいはもっと低い地表近くに移動したのだろうか?夏の最盛期には生い茂る雑草等の茂みの奥深くに潜んでしまったのだろうか?

 それとも鳥やカマキリなどの捕食者に食べられてしまい、その数を減らしていっただろうか??

 食樹のひとつである桜は9月16日の時点で半分ほど葉を落としていた。晩秋まで生き残ることもあるコイツらは、次にどこで何を食べているのだろう?移動速度は雑草の間なら10分で80㎝程度、何もない木の幹なら10分で2-3mくらいは移動する。

多く発生する年や少ない年など、ある程度の個体数変動がはあるだろう。今年は「当たり年」だったために、見つけることができたのかもしれない。いくつかの昆虫愛好家のBlogなどを参照すると2020年は長野県北社では「例年より多く見られる」とのことで一枚の写真の中に5匹も写っている写真がみつかった。個体の移動速度から全国的に「当たり年」ということは考えにくく、ごく限られた地域で増減を繰り返しているものと考えている。

これらの疑問を解消するには今後数年の観察が必要になることだろう。

また新たな発見があれば、本稿を加筆・修正していきたいと思っている。

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写真3 コンデジの接写モードで撮影。2021年も会えるかな?(2020年6月27日、久保田にて)

 

【参考】

こちらの方のBlogにナナフシに関する面白い話がありましたのでリンクを張っておきます。

寓話的ヤスマツトビナナフシのオス | チャンネルF+

以上