千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

ナナフシモドキ(その4、総括的まとめと2023年以降の話)

<編集履歴> 2023年6月26日公開、2024年4月11日見直し更新(第3回目、2024年初目撃事例を追加)

 

【はじめに】

 2022年のシーズン末に「特別な事情が無い限りは、(過去3年間に沢山写真撮影したので)もう撮らない」と宣言したナナフシモドキ。本記事は2020年シーズンから観察しはじめた袖ケ浦市内のナナフシモドキに関するまとめとしておこう。

【ナナフシモドキに関する基本的な話】

面倒なのでWikpediaや昆虫専門サイトの記事などを検索して読んでおいてください(完全他力本願モード)。

 

袖ケ浦市の地形とナナフシモドキの分布】

(1) 散歩がてらに調べた袖ケ浦市内のナナフシモドキの分布域は、おおむね小櫃川の北側にある丘陵(高台程度)エリアおよびその辺縁部といったところだろうか。この高台周辺の雑木林から住宅地に1ブロック入った辺りまではナナフシモドキを見つけることがある。県道300号線以北のエリアにおいては「椎の森公園」以外の場所は歩き回ったことがないが、椎の森公園内でも生息を確認しているので、同様に生息しているものと考えている。

(2) 小櫃川北部に広がる稲作エリアにでは見つけていないが、高台辺縁部の民家の生垣あたりでは時たま姿を見かけることがある。具体的には小櫃川広域農道周辺では見つけたことは無いが、その数百メートル北側を走る県道143号線(南総昭和線)付近(袖ケ浦公園を含む)ではみつけることがある。

(3) 高台の辺縁部では高台が削られて住宅地となっていたり、道路によって分断された「元丘陵地だった場所の名残」や「飛び地」のような小さな雑木林があり、その周辺でみつけることもある。また川の上流から流されてきたり、近隣の生息地から風に飛ばされてきたり、あるいは荷物にくっついて車で運ばれてきたりしたのだろうか、「おや、こんなトコロにもいた!」ということもある。

(4)「毎年4月上旬に幼虫が見られる」場所(成熟した成虫のお好みの産卵場所である植樹や茂み)はほぼ決まっており、これをみつけることができれば、その後の継続した観察は行いやすくなる。

<参考:自身の袖ケ浦市以外での目撃例>

・1970年代後半ごろ: 長野県茅野市周辺もしくは静岡県熱海市。除草に際して胴部を切断されもがく個体を発見

・2023年04月20日 千葉県成田山新勝寺成田山公園内)

・2023年07月07日 茨城県百里基地

 

【時節と大きさ、体色】

 袖ケ浦市内で観察できるナナフシモドキの大きさとそれが見られる時節は次の通りです。なお大きさは私自身の指の太さや長さ、手のひらの幅を目安として「測定」したものであり、最大で10~20mm程度の誤差があるものと考えてください。

(1) 4月上旬~中旬ごろ:15~17mm程度。ある日突然多数の個体が現れるので、複数の卵から一斉に孵化しているのだろう。

※2024年4月11日には観察ポイントB2で1匹、B3で2匹をみつけた。これまでの例から、もう少し多くの幼生をみつけても良さそうに思うが、4月9日は低気圧の接近で暴風雨となっていたため、飛ばされてしまったのかもしれない。

写真1-1 15-17mm程度の幼虫(初令か?)。脚には黒のまだら模様がある。また頭部先端から目を通り後頭部にかけて黒線がある。背部は黒色というより濃緑色と言う感じだ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2021年4月8日千葉県袖ケ浦市久保田

 

(2) 4月中旬~5月上旬ごろ: 22mm程度(指幅1本半程度)

(3) 5月中旬~下旬ごろ: 27mm程度(指幅2本未満程度)、この頃には見つける個体のサイズのばらつきも多くなり、孵化時期の早いものと遅いものの差が目立つようになる。

写真2-1 27mm程度の幼虫(2~3令幼虫か?)。初令の頃に見られた脚の黒色まだらは無くなり、全身が緑一色となる。このサイズの頃の褐色個体はまだ見たことがない。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/200秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2023年5月26日千葉県袖ケ浦市久保田

 

(4) 5月下旬~6月中旬ごろ:35mm程度(指幅2本分)のもの、55mm程度(指幅3本分)のものが主流になる。55mm程度を超えると褐色個体(脚は緑で胴体だけが褐色のものを含む)も見られるようになる。この時期には2時間程度の私の散歩時間の間に数か所~10か所程度で、のべ20匹程度をみつけることは容易だ。

(5) 6月中旬~6月下旬ごろ:75mm程度(指幅4本分を超える程度)のものが姿を現すようになる。この頃から目の高さ(1~2m程度)を超える高さの場所や「これまで数多くたかっていた植樹の周辺」でも見られるようになると同時に「これまでたかっていた植樹」で見られる個体数が急減する。

(6) 6月下旬ごろ:75mm程度(指幅4本分を超える程度)が主流で、105mm(親指を含めた手のひら幅程度)の成虫も見られるようになる。その一方で55mm程度の個体もまだ見かける。2時間程度の散歩時間内に数か所程度でのべ10匹程度をみつけることができれば「良い方」といえる状況になる。

(7) 7月初旬~中旬、それ以降:ほぼ全ての個体が105mm程度の成虫となる一方で、見つけることが著しく困難になる。頭上数mの枝の上にいることもある。

写真3-1 草むらにいた105mm程度の成虫。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/200秒, f=8.0。手持ち撮影、トリミングあり。2020年6月29日千葉県袖ケ浦市久保田

 

(8) 8月中旬以降はナナフシモドキをみつけたことがない。10~11月までは存命しているというのだが・・・。

(9) 9月中旬ごろ:サクラの樹の落葉が始まる。図鑑などには「幼虫はサクラの若芽を食べる」などと言う記述も見られたが、神社などのサクラ並木にいた成虫はどこに移動して産卵するのだろうかと毎年不思議に思う。

写真4-1 神社のサクラの樹をよじ登る褐色の成虫。神社のサクラの樹では幼虫のころからナナフシモドキをみつけているがサクラは9月中旬には落葉してしまう。この後ナナフシモドキはどこに移動するのだろう?それとも落葉と共に餌が無くなり寿命を終えるのだろうか?EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年7月30日千葉県袖ケ浦市久保田

 

【体色の例】

 上述の通り5月下旬~6月中旬ごろにかけて全長が55mm程度(指幅3本分)となるころから体色変化が確認されている。おおむね緑色系と褐色系に大別されるがそれぞれ様々なバリエーションがある。

・緑色系:全身が緑色だが個体により濃淡や青緑がかるなどの変化あり、緑色、若草色、青竹色などと表現できそうだ。また緑色だが脚の付け根付近だけが赤ないしは赤褐色となるものもある。

・褐色系:全身が褐色だが、個体により褐色の程度に濃淡がある。褐色の体色にこげ茶色から黒色の斑点をちりばめ、より黒色に近い褐色に見える個体もある。また脚のみは緑色だが胴体だけが褐色の個体もある。

「枯れ枝の多い所にいるのは褐色系」「緑色の草本類の多い所にいるのは緑色系」というのであればハナシは簡単だが、両者は同じ場所に混在しているので何が引き金となって褐色系や緑色系に分かれていくのかは分からない(文献検索も行っていないので、過去に何らかの試験を行ったことがあるのかどうかも分からない)。

 

【交尾と産卵】

 ナナフシモドキの雄は大変に珍しく、見かける個体はほぼ間違いなく雌だ。通常は単為生殖で秋口頃から多数の卵を産み落とすというが、私自身の撮影スタイル(夕飯の食材を購入するためにスーパーマーケットに行くついでに散歩する)では卵の発見はできないと思っている。

 

自切と再生】

 撮影後の個体を指でつつくとポロリと枝から落ちることがよくあるが、この際に脚の1本程度を落とすことも多い。感覚的な話だが75mm程度の大きさ以上の個体の場合には脚を1~3本落としている個体の割合がかなり高い。

 自切した脚は個体が小さなうちには脱皮の際に再生できるようだが、一度の脱皮では再生しきれないのか、それとも上手く再生できていないのか分からないがグルグルと輪を描くような脚となっている個体をよく見かける。

写真3-1 右前脚が不完全な再生をしている個体(85~105mm程度)。またこの個体は頭部の目と目の間と脚の付根が赤紫色となっている。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=9.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2020年6月26日千葉県袖ケ浦市久保田

 

【天敵】

 クモの巣に長い脚だけが残されているのを見たことがある。また横浜にてスズメがナナフシ(ナナフシモドキかエダナナフシと思われる)をついばんでいたという目撃情報が寄せられている。袖ケ浦市の生息地にはオオカマキリなどのカマキリ類やトカゲ、カナヘビ、ヤモリなども多数見られるので、これらの餌となることも多いものと思われる。「忌避物質を出すので食害されない」というような話は私自身はまだ調べたことがないので分からない。

以上