千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

クマゼミ

<編集履歴> 2020年03月19日公開、2023年09月21日見直し更新(第14回目、2023年まとめ)

 

 しゃぁしゃぁしゃぁ・・・と大きな声で鳴く体長60~70mm程度の国内では最大のセミクマゼミCryptotympana facialis。私が小学生のころ、すなわち1970年ごろには東京・杉並区ではクマゼミの声は聞こえず、小田原~熱海あたりまで行かないと見つけることができなかった。このため夏休みに熱海方面に海水浴に連れて行ってもらい、そこでクマゼミを採ることを楽しみにしていたものだ。その後、都市化が進んで都市部での気温が上がったためか、温暖化そのものが進んでいるのか、横浜近辺で見られるようになり、実家のある東京杉並付近でも鳴き声が聞こえるようになり、さらには千葉駅周辺でも時々鳴き声が聞こえるようになってきた。

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写真1 沖縄の嘉手納基地に近い兼久海浜公園の植樹にはびっしりとクマゼミが止まっていた。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO200, 1/200秒, f=7.1、内蔵ストロボ発光、手持ち撮影。トリミングあり。2018年7月8日、沖縄県兼久海浜公園にて 

 

 感覚的にはクマゼミは静岡から神奈川、東京の二十三区部を北上し、蘇我以北の千葉県をかすめて茨城県にかけて生息域を広げているように感じている。ただしこれは確かな証拠や分布に関する報告書を読んだワケではなく、SNS投稿などから判断した個人的な推測・感覚だ。後述の「クマゼミから温暖化を考える」という本の中では神奈川以北では植木などについて分布域を広げた(北上した)もので、自然に分布域が広がったものでは無いように思えるという旨の記述がある。ちなみに捕獲個体にマーキングして再捕獲を2004~2005年に試みたところ、クマゼミの移動距離は最大で1.2km程度との結果が得られたそうです。

 そして蘇我以南の房総半島にはまだ南下していないと思っていたのだけれど、2020年8月22日の早朝に袖ケ浦市久保田付近の林の中で1匹だけ鳴いているのを確認した。

「ついに来たか!」 

 

 2021年は7月29日に長浦駅前近くで、これまた1匹だけしゃあしゃぁと鳴いていた。同日、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ニイニイゼミは大合唱だったが、クマゼミの声はこの一匹だけであった。だが7月31日、8月1日には袖ケ浦市久保田周辺で10数匹が「しゃぁしゃぁしゃあしゃあっっ!!!!」。2021年8月2日以降の数日は旅行で不在であり、戻ってきてからはクマゼミの鳴き声を確認していない。

 袖ケ浦でも一般的にみられるようになった、と記載しておこう。

【鳴いている時期まとめ】

2020年8月22日のみ

2021年7月29日~8月1日

2022年8月3日~8月17日(8月22日以降10月までは日中不在の事が多く、鳴いていた期間と言う意味では不正確。あくまで参考まで)

2023年7月24日(7月21日早朝~23日不在のため未確認)~8月16日

 

注1:千葉県立中央博物館/房総山のフィールド・ミュージアムが発行するニュースレター「しいむじな」2021年秋号(No.74、2021年9月発行)の連載記事「小櫃川流域の生きもの」では成田篤彦氏が「クマゼミの抜け殻~街中で発見~」として2021年7月20日木更津市内でクマゼミの抜け殻を発見したことを紹介している。この記事によるとクマゼミは1970年代の前半には木更津市、富津市、君津市南房総市(いずれも現代の市名)の海岸沿いで散発的に鳴いていたが(鳴かない)メスは確認されていなかったこと、定着していることを示す抜け殻がこれまで発見できなかったということが述べられている。そして2021年夏に「抜け殻」が見つかったことで、ようやく定着の証拠が得られたとしている。

 なお別記事「セミに関する雑談と成書や文献の紹介など」に記載したが、地中で数年を過ごしてから地上に現れるセミが定着したことを示す指標(証拠)として「抜け殻」が用いられているが、残念なことに私自身は袖ケ浦市内でクマゼミの抜け殻をまだ見つけていない。

セミに関する雑談と成書や文献の紹介など - 千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

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写真2 こちらも兼久海浜公園での撮影。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO200, 1/200秒, f=7.1、内蔵ストロボ発光、手持ち撮影。トリミングあり。2018年7月8日、沖縄県兼久海浜公園にて 

 

【参考文献など】

クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書(2016)

読者対象が若い方なので優しい言い回しでクマゼミの生態を解説している。もちろん、本書の主題はクマゼミと温暖化の関連性について述べることだが、私のようなオジサン初心者にはちょうど良いクマゼミの入門書でもある。なおクマゼミの生態に関する部分は大阪市立大学森山実氏の学位取得論文(2009年3月)なので、詳細はそちらを参照する。森山氏はその後、つくば市産業技術総合研究所に勤務されている。

https://staff.aist.go.jp/t-fukatsu/Moriyama%20right.html

 

「都会に住むセミたち 温暖化の影響?」沼田英治・初宿成彦著 海游舎(2007)

 上述した「クマゼミから温暖化を考える」の9年前に沼田氏らが発行した本。これら二冊を読むと考え方・視点が変わってきたことがわかるが、時間が無ければ後から出版された「クマゼミから温暖化を考える」だけを読んでおけば良いだろう。

 

クマゼミ~北上する南国のセミ~」成田篤彦、しいむじなNo.62(2018)

実は私自身、まだ目を通していない。近いうちに市内図書館で探してみようと思っている(2021.10.30記)

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写真3 袖ケ浦市でも見られるクマゼミだが、写真撮影が可能な低いところに止まっているヤツは数少ない。この日ようやく「証拠写真」を撮影することが出来た。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/160秒, f=8.0、内蔵ストロボ発光、手持ち撮影。トリミングあり。2021年8月1日、千葉県袖ケ浦市長浦駅前にて 

以上