千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

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【雑談】蝗害

<編集履歴> 2023年2月18日公開、2023年3月21日見直し更新(第1回目、一部加筆)

 

 国立科学博物館で開催している特別展「毒」も今週末(2023年2月19日)までとなりました。「毒を持つ生物」の話の方が展開しやすいのだけれど、チョイト異なる方面で気にあることがあったので書き残しておきます。

 さて特別展「毒」のチケットに描かれたのはライトノベル薬屋のひとりごと」(原作:日向夏)の主人公”猫猫”(絵:しのとうこ)。中国っぽい国の薬師”猫猫”が宮廷で起こる難解な事件を解決していくというミステリー(?)だ。

写真 「毒」展の入場券。「薬屋のひとりごと」(原作:日向夏)の主人公”猫猫”(絵:しのとうこ

 

 この小説の中に主人公らが蝗害に立ち向かう話がある。中国(のような国)の歴史モノであれば、蝗害そのものは何度も発生しているので取り上げられていてもなんら不思議ではない。日本でも何度か蝗害が発生しており、近年ではコミック(アニメ)「ゴールデンカムイ」(野田サトル作)の中にもその描写がある。だけど「薬屋のひとりごと」の中では蝗害の前兆として捕まえたバッタの細部測定を行う際の描写や蝗害を起こす際にはバッタの形態が変化していくという説明がやたら細かく描かれてるのだな。

 

 原作者は生物系の実習をやったことがあったのか、それとも参考書が存在したのだろうか?という点が気になった。

 そこでまずはWikipediaでプロフィールを調べるも、学歴などは不明。次いで「小説家になろう」のサイトで作品を見ると、2015年頃に書かれた市井編あたりから蝗(飛蝗)の話が出てくる。プロット(ストーリー)の構築は恐らく1~2年前だろうから、2013年に入手できた図書・文献類があれば、それを参考にしているのだろうと考えた。

https://ncode.syosetu.com/n9636x/

 

 一般に入手できる(蝗害を引き起こす)バッタの話と聞いて、直ぐに思い浮かべたのが「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎、光文社2017)だが、これは2017年発行なので新しすぎるので原作者はこれを読んでから書いたということはあり得ない。だが、その前段階の話である「孤独なバッタが群れるときーサバクトビバッタの相変異と大発生」(前野ウルド浩太郎、東海大学出版2012)であれば参照した可能性がありそうだ(本書は2022年に光文社新書としても発売されているが、あくまでオリジナルの方の話ね)。

 

 あとはいくつか図鑑やバッタハンドブックなどを眺めてみたけれど、なんの基礎知識もなく「測定の細部」の描写ができそうなのはやはり「孤独なバッタが群れるとき」を参考にした場合だろうかねぇ。原作者が何らかの生物系実習を行った経験があれば話は変わってくるのだけれど。あるいは原作者の周囲の方々が情報提供してくださった場合だろうか。周囲の人間が原作者に協力している話はごく当たり前のように存在するが、開き直って一般公募に近い形で話を集めた例としては過去には佐々木倫子のマンガ「動物のお医者さん」(花とゆめ1987-1993連載)が挙げられるだろうか。獣医学科の学生の様子が詳細に描かれた本作品では佐々木自身による取材のほか、全国の獣医学関連の学生や卒業者たちから多くのネタ投稿があったという話を聞いたことがある。私自身も似たような学部卒なので「どこの学科の学生も同じようなコトやっているなぁ」とニンマリしながら読んだものだ。

 

 「蝗害」からは外れるけれど、「薬屋のひとりごと」中で使われた「毒」の大部分は話の途中でその原因物質を予想することができた。でも「オゴノリ」だけは全くお手上げ・知らなかったな(ネタバレになるので、詳細は省略)。青山剛昌のマンガ「名探偵コナン」の殺人ネタで使われたことがあっただろうか?オゴノリの有毒性については比較的近年に知られたことなので、これを使った殺人ストーリーはまだ少ないのではないかなどとボンヤリ考えてます。

 

 最後に、「薬屋のひとりごと」は2023年秋にアニメ放送されることが決定したと2023年2月16日に発表されました。楽しみですね。

https://ncode.syosetu.com/n9636x/

以上