千葉県袖ケ浦市周辺の生物など

千葉県袖ケ浦市や内房エリアの動植物のお話など。鉄道やヒコーキもあります。

タマムシ(ヤマトタマムシ)

編集履歴】 2020年9月26日公開、2022年8月17日見直し更新(第3回目、写真追加)

 

 タマムシ(標準和名はヤマトタマムシ、Chrysochroa fulgidissima)は千葉県では準絶滅危惧種に指定されている昆虫だ。袖ケ浦市の私の散歩コースでは年に1~2回程度は目にする美しい甲虫だ。

 

【2020年のお話】

 2020年7月20日の日中、袖ケ浦市のゴルフ場近くを歩いているとブ~ンとやや重々しい羽音をたてて目の前を通り過ぎていく金属色黄緑色の甲虫が。うぉぉっ?!タマムシだっ!!踏みつぶされた死体や色沢鮮やかな翅だけは何度か見ているが、天然物で生きているのを見るのは小学校以来のハズ・・・ということは前回見てから少なくとも45年は経っているワケだな。

 と、止まれ~っ!という心の叫びが通じたか、傍の木に着地してくれた。あわててカメラを出すも、結構チョコマカと動き回りピントが合わない。何とか1枚撮ったところで木の反対側に隠れてしまった。回り込むことができない場所だったのでこれでおしまい。写真をよく見ると頭部がへこみ、右の触角がとれ、左の翅がやや変形していたりと傷ついているね。 

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写真1 かなり傷ついていたタマムシ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=7.1。手持ち撮影、トリミングあり。2020年7月20日、千葉県袖ケ浦市

 

それから15分後、ボクの目の前に何かが舞い降りた。本日二匹目のタマムシだった・・・。いったい今日は何の日だ??拾い上げて近くの桜にとまらせて、「やらせ写真」撮影。コイツは右の翅が痛んでいました。 

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写真2 この日見つけた二匹目のタマムシ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=7.1。手持ち撮影、トリミングあり。2020年7月20日、千葉県袖ケ浦市

 

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写真3 道路に降りたタマムシを近くの植樹にとまらせて「やらせ写真」撮影。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/250秒, f=7.1。手持ち撮影、トリミングあり。2020年7月20日、千葉県袖ケ浦市

 

その後、2020年9月4日と5日にそれぞれタマムシの死骸を見つけた。この日までこの辺りに生存していたという記録としてここに記しておく。

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写真4 踏みつぶされたヤマトタマムシの死骸。この辺りで成虫が見られる時期を確認するのに役立つので記録は残しておく。2020年9月4日、千葉県袖ケ浦市

 

【2021年】 

 2021年のシーズンはついに生きている個体を見ることができず、道路で踏みつぶされていた2個体をみつけただけで終わってしまった。(2021年8月30日記)

 

【2022年】

 2022年8月17日、散歩コースでB3と名付けた観察ポイントの地表20cmほどの枯れ枝に一匹のタマムシがとまっているのを見つけた。数枚撮影したのち、場所が悪いのでつまんで近くの葉の上に乗せ、”やらせ写真”を撮影した。

写真5,6 2年ぶりに見つけたタマムシ。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/200秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年8月17日、千葉県袖ケ浦市久保田

 

写真7 写真5,6を撮影したあとで近くの葉の上に移して「やらせ写真」撮影。EOS70D, EF70-200mmF4L IS USM, ISO400, 1/125秒, f=8.0。内蔵ストロボ発光、手持ち撮影、トリミングあり。2022年8月17日、千葉県袖ケ浦市久保田

 

【余談その1、タマムシの活動時間】

 一日を5~6コマの時間帯に分けて昆虫の飛翔する時間帯を調べたところ、タマムシの仲間が採取されたのは昼間の時間帯だけだったという結果が得られたそうです。多くの昆虫が日陰で休んでいる夏の暑い時期でもタマムシの仲間はもっとも暑くなる午後2時頃によく採れたそうです。この研究論文の原文は見つけていませんが、見つけたらリンクを張ることにしましょう。

 

【余談その2、玉虫型飛行器】

 二宮忠八が考案した「玉虫型飛行器」という機械があります。ライト兄弟より少しばかり早く考案された「航空機」ですね。彼が注目したのは写真のタマムシの飛行時の形態だったと言われています(添付文献、2ページ目参照)。固定した硬い前翅で揚力を得て後ろの柔らかい羽根で推進力を得るということですね(注)。同じ飛翔形態をとるカブトムシでもクワガタムシでもカミキリムシでも良かったのでしょうが、たまたまタマムシに注目しちゃったから「玉虫型飛行器」になったのではないでしょうか。https://www.rikou.ryukoku.ac.jp/images/journal65/RJ65-01.pdf

注)上記の写真に見られるように、実際のタマムシの前翅は変形しているものが多いですね。これが飛翔時の揚力を生み出すなら、左右の揚力バランスはかなり異なることが容易に想像できます。このことから「前翅で揚力を生み出す」という仮説は否定できるか、あるいは「飛行に影響を及ぼさない程度の揚力しか生み出さない」ものと思っています。どこかにこれ(甲虫の飛翔)を確認した論文でもないかな~?

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写真5 小松空港前の石川県立航空プラザに展示されている「玉虫型飛行器」の復元模型。2018年9月18日撮影

以上